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2005年8月 7日 (日)

琵琶

001koto(写真は風俗博物館2001年展示「春の遊び 蹴鞠」より、平安時代の代表的な絃楽器4種。一番左が琵琶です)
中国伝来のリュート型絃楽器。四絃。
やや下膨れのナスのような形をした浅い槽に腹板を張って胴とし、腹板側に絹の絃を張り渡します。
撥が当たる胴の部分は「撥面」と呼んで皮を張ります。
頸部は、胴本体と滑らかな曲線でつながっていて音の高さを決める柱(じゅう)が付き、先端が後ろ側に曲がって糸巻があります。
胴の下部には絃の振動を胴に伝える覆手(ふくじゅ)があり、その蔭に「陰月」と呼ばれる、響孔にあたる円形の音穴があります。
陰月は、写真のように演奏しないときの撥の収納場所にもなります。
標準的な全長は三尺五寸(約106.5cm)、胴は紫檀やカリン、桑などの硬い木材で、撥は黄楊でつくります。

「国宝源氏物語絵巻」宿木(三)に見られるように、頸部が左手側、絃が水平になるように構えて、右手に持った撥で上から下に掻き下ろすように弾きます。
箏や和琴の音が「爪音」というのに対して、琵琶は「撥音」といいます。
筝と同じく、調絃は六調子によってそれぞれ異なります。
『うつほ物語』初秋巻や『源氏物語』乙女巻に、女が琵琶を弾く姿を「憎し」とする評が見られ、どうも女性が琵琶を抱えて演奏する姿は平安貴族にはあまり好まれなかったようです。

『源氏物語』では、明石の君が格別に優れた名手であると繰り返し描かれ、蛍宮も好奏者として合奏の場面では頻繁に琵琶を担当しています。
その他は、明石の入道、大宮、夕霧、薫、宇治の大君・中の君、匂宮、更に源典侍、中務の君(左大臣家の女房)、少将の命婦(冷泉帝の女房)、玉鬘邸の女房など女房クラスの奏者も何人も見られます。
意外なことに、光源氏が琵琶を演奏する場面は本文中にはありません。
005biwa琵琶こそ、女のしたるに憎きやうなれど、らうらうじきものにはべれ」(乙女巻)
との言に沿っているのかいないのか、源典侍や宇治の中の君のように、女性奏者の演奏場面が印象的に描かれているのも興味深いところです。

上の写真は、風俗博物館2001年展示「女楽」より、琵琶を弾く明石の君です。

【参考文献】
秋山虔, 小町谷照彦編『源氏物語図典』小学館 1997年
東儀信太郎[ほか]執筆『雅楽事典』音楽之友社 1989年
平野健次[ほか]監修『日本音楽大事典』平凡社 1989年
上原作和編「源氏物語音楽用語事典

【写真提供】
小池笑芭さん(2枚とも)

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