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2005年8月 5日 (金)

筝(そう)

001koto(写真は風俗博物館2001年展示「春の遊び 蹴鞠」より、平安時代の代表的な絃楽器4種。一番右が筝です)
中国伝来の長胴チター属撥絃楽器。十三絃。「筝の琴(そうのこと)」とも言います。
古代は桐の部材を箱状に組み合わせて胴としましたが、その他は現代の筝(いわゆる“お琴”)と概ね同じだったようです。
絃は絹を縒り合わせたもので、奏者から見て遠い方の一~五絃が太緒(ふとお)、六~十絃が中緒(なかのお)、斗為巾(といきん。十一~十三絃)が細緒(ほそお)になります。
胴の輪郭はほぼ長方形で、大きさは嵯峨天皇の時代に全長六尺五寸(約197cm)と規定されました。

各絃にひとつずつ琴柱を立て、その位置の調節で音の高さを定めます。
調弦の仕方によって、呂律いずれの演奏も可能だったようです。
演奏時は、奏者は頭部を右にして相対します。
平安文学でも筝の音色を「爪音」と表現することから、現代と同じく右手指に爪をはめて絃を弾いたと考えられますが、常に爪を用いたかどうかははっきりしません。
左手の奏法に「取由(とりゆ)」という絃を揺する手法があり、『源氏物語』にはその音色や手つきが風情あるものとして描写されています。

『源氏物語』では最も多く登場する絃楽器で、主な演奏者は光源氏、藤壺、紫の上、明石の入道、明石の君、蛍宮、雲井雁、朱雀院、明石の女御、竹河巻の大君(玉鬘の娘)、宇治の大君・中の君、八の宮、匂宮など。
女房達が弾く場面も見られ、性別や身分を問わずよく演奏された楽器と言えます。
琴の光源氏や和琴の頭中将のような強烈な名手はいませんが、明石の君だけは、源氏が最高の奏者と考えていた藤壺にも優る驚くべき技量であると明石巻で絶賛されています。
また、幼い若紫や雲井雁が筝を弾く手つき・姿の可愛らしさが描写されたり、明石巻で
女のなつかしきさまにてしどけなう弾きたるこそをかしけれ
と言われたりしており、女性がくつろいだ雰囲気でたおやかに奏でる様子が好まれたようです。

多くの人の演奏が描かれる筝ですが、特筆すべきは明石一族との結びつきの深さです。
明石の入道は延喜の帝の奏法を受け継ぎ、その娘・明石の君は『源氏物語』随一の名手です。
004sou更に三代目となる明石の姫君は、三歳から紫の上の養女になったにもかかわらず、若菜下巻の女楽の場面では、実母・明石の君の手遣いによく似た音色を奏でます。
明石一族の奏でる筝の音色にだけ「澄む」という形容がされるのも、原文を読む上で注目すべき点だと思います。

上の写真は、風俗博物館2001年展示「女楽」より、筝を弾く明石の女御です。

【参考文献】
秋山虔, 小町谷照彦編『源氏物語図典』小学館 1997年
東儀信太郎[ほか]執筆『雅楽事典』音楽之友社 1989年
平野健次[ほか]監修『日本音楽大事典』平凡社 1989年

【写真提供】
小池笑芭さん(2枚とも)

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