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2005年9月22日 (木)

高麗笛

011komabue(写真は、2004年風俗博物館展示「季の御読経」より、高麗笛を持つ高麗楽の楽人)
高麗楽や催馬楽に用いる横笛の一種。
中世以降は、歌笛(中管)の代用として東遊にも用いられるようになりました。
長さは約36.5cmで竜笛よりもやや小さく、径も細いため、その分竜笛より高く鋭い音が鳴ります。
外見は竜笛と似ていますが、指孔の数は6個と竜笛より1個少なく、竹の表皮を残したままとすることが多いのも異なる点です。
頭部の端には、竜笛の赤地錦とは対照的に青地錦を用いるのが普通です。
(この色の選択は、雅楽の左方・右方の衣裳の対比に合わせてのものかと思われます)

指遣いや演奏方法などは竜笛と同じで、雅楽では篳篥とほぼ同じ旋律を奏でる点、合奏が高麗笛の独奏から始まる点も竜笛と共通しています。

平安文学では、高麗笛とはっきりわかる例は少なく(あるいは「笛」とだけ書かれているうちのいくらかは竜笛ではなく高麗笛なのかもしれません)、『源氏物語』に4例を数える程度です。
しかも4例の中で演奏する場面は末摘花巻の左大臣(光源氏の舅)と若菜下巻の光源氏の2例のみで、あとは贈り物として登場します。
梅枝巻で光源氏から蛍宮へ、若菜上巻で同じく光源氏から太政大臣(=頭中将)へ、そして若菜下巻で女三の宮から光源氏へ(この贈られた笛を光源氏が吹くのが、上に挙げた2例目です)。
いずれも疎かにできない重々しい身分の人物に贈られており、格式の高さが感じられますが、これが当時の価値観なのか作者の好みなのかを判断するには些か材料が少なすぎます。
ただ、「高麗の紙」や「高麗の錦」といった朝鮮半島及び渤海に由来するものを作者が好んだらしいことは、『源氏物語』の表現から窺い知ることができ、この点については、いずれ別記事にまとめてみたいと思っております。

012komabue_2若菜下巻の女楽の場面では、光源氏が高麗笛を吹くと即座に夕霧が竜笛を吹き合わせます。
雅楽では左右に分かれて一緒に演奏することのない高麗笛と竜笛ですが、笛同士で合奏するときもあったことを教えてくれる描写です。
竜笛も高麗笛も含めて、横笛という種類の楽器がそれだけ平安貴族にとって身近な楽器だったということだろうと思います。

上の写真は、2001年風俗博物館展示「女楽」より、光源氏に高麗笛を差し出す女三の宮の童女です。

【参考文献】
秋山虔, 小町谷照彦編『源氏物語図典』小学館 1997年
東儀信太郎[ほか]執筆『雅楽事典』音楽之友社 1989年
平野健次[ほか]監修『日本音楽大事典』平凡社 1989年
上原作和編「源氏物語音楽用語事典

【写真提供(女楽)】
小池笑芭さん

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●高麗笛・・・高麗笛(こまぶえ)は狛笛とも表記し、主に朝鮮半島を経由して入ってき [続きを読む]

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