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2005年12月11日 (日)

『平安時代の儀礼と歳事』

015lit_and_cult山中裕, 鈴木一雄編集 至文堂 1994年刊行
ISBN:4-7843-0119-4 税込2,625円

先にご紹介した『平安時代の信仰と生活』と同じ『平安時代の文学と生活』シリーズの2冊目。
こちらの収録テーマは、平安貴族の通過儀礼や年中行事、御世替わりに関わる儀式などです。
以下、目次をご紹介いたします(著者敬称略)。

皇位の継承儀礼―『北山抄』を中心に―(所功)
後宮制度―后妃と女官―(所京子)
貴族の通過儀礼
 1.誕生・産養(小川寿子)
 2.袴着・元服・裳着(藤本勝義)
 3.結婚(伊藤一男)
 4.算賀(小町谷照彦)
 5.葬送・服喪(河添房江)
平安時代の年中行事(山中裕)

通過儀礼と年中行事は、割とどの本を見ても載っていますが、それぞれの解説の詳しさはさすが!の一言です。
儀式次第や室礼に関する記述が豊富で、風俗博物館の展示で年中行事や通過儀礼が取り上げられた際には、この本の記述で展示されている調度類の細部に合点がいくということもしばしばです。
また『源氏物語』に限らず平安中期の文学全体を対象としているため、『源氏物語』の中には登場しない儀式も解説されており、“『源氏物語』が描かなかった行事”という観点を得られる点も意味があると思います。
(例えば八月十五日の月の宴は、『源氏物語』ではかなり変則的な描かれ方になっています。詳しくは筆者が源氏の部屋に寄稿した「月の宴(仲秋の名月)」をご覧ください)

一方、皇位継承や後宮制度は、文学作品を読んでいるだけではあまり接する機会のない分野で、政治・行政の制度面を知る上で参考になります。
特に後宮制度については、『源氏物語』に言葉としては数多く出てくる「中宮」「女御」「更衣」「御息所」「尚侍」「典侍」といった后妃や女官の制度上の位置づけや職掌などの具体像がわかり、お薦めです。

『源氏物語』は女房の昔語りを仮構しているため、政治・行政制度や儀式次第の詳細は「男性の世界のこと」として語ろうとしませんが、華やかな儀式行事の情景描写や、時折ちらりと触れられる政治的な事柄は、当時の確かな経験と知識に基づいて書かれています。
この本は『源氏物語』のそうした側面を踏まえ、現代の読者がより同時代の読者の感覚に近づいて読むための下地を提供してくれる、大事な1冊です。

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