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2005年12月 3日 (土)

鞨鼓(かっこ)

022kakko筒型の胴の両面に皮膜を張り、膜同士を紐で締め合わせた膜鳴楽器。
胴は通常木製で、長さ30cm、口径15cm程度。中央が膨らんだビヤ樽型をしています。
皮膜は直径23cmほどの鉄製の輪に張り、これを胴の両端に当てて「大調」と呼ぶ革紐で締め、更にその革紐を「小調」と呼ぶ紫か紅の組紐で締めて皮膜の張力を調節します。
(写真は、2004年風俗博物館出張展示「一条帝による土御門邸行幸」より、鞨鼓)

演奏時は、写真のように台に載せて2本の桴で打って鳴らします。
奏法は、右桴で右皮を1回打つ「正(せい)」、片皮面のみを最初はゆっくり、次第に速く連打する「片来(かたらい)」、左右の桴で両皮面を交互に細かく打つ「諸来(もろらい)」の3種類を基本とします。
これらを組み合わせてリズムパターンをつくります。
リズムパターンの基本は8種類で「鞨鼓八声」と呼ばれ、『教訓抄』巻九には宝亀九[778]年に進鼓生・壬生駅麿(みぶのうまやまろ)がこれを定めたと記されています。

中国から唐楽の楽器として日本に伝来し、太鼓・鉦鼓と共に唐楽に用いられました。
唐楽においては打楽器の首位に置かれており、指揮者に類するリーダー格の人が担当します。
演奏のテンポを決定したり、演奏終了の合図を発したりと、重要な役割を果たします。

ですが、平安時代には鞨鼓に限らず打楽器は全般に地下の楽人が担当する楽器で、貴族が演奏することはありませんでした。
そのためか、『源氏物語』の中に鞨鼓の名前は登場せず、ただ打楽器の総称としての「」が3例見られるのみです。
しかも演奏者の姿は描かれず、その音に触れるばかり。
『枕草子』でも扱いは同様です。
読者は、描かれることのない打楽器の音色を、舞楽や管弦の合奏の描写から想像することになります。
楽所の人召す」「楽人参る」と点描される名もない人々が演奏した、しかし華やかな合奏を確かに彩っていた筈の、縁の下の楽器のひとつです。

【参考文献】
秋山虔, 小町谷照彦編『源氏物語図典』小学館 1997年
東儀信太郎[ほか]執筆『雅楽事典』音楽之友社 1989年
平野健次[ほか]監修『日本音楽大事典』平凡社 1989年
狛近真著 ; 植木行宣校訂『教訓抄』(日本思想大系第23巻『古代中世藝術論』所収)岩波書店 1973年

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雅楽の楽器:鞨鼓(雅楽のウェブログサイト/ kenken’s 雅楽)

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