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2006年1月29日 (日)

国宝『源氏物語絵巻』に描かれた謎のモノ達(2)尼君

※「国宝『源氏物語絵巻』に描かれた謎のモノ達(1)」を未読の方は、そちらから先に読まれることをお薦めします。

国宝『源氏物語絵巻』竹河(二)は、現存する絵巻の中で屈指の華麗な場面になっています。
真ん中に満開の桜、左手には折に相応しい彩りの衣裳を着た姫君達、そして画面上部にも美しく装った女房達と、暖色中心の色彩で全体にとても明るく華やいだ雰囲気です。

ところが、この絵の左隅に、なんとも不似合いな人物が描かれています。
それは尼君。
御簾の内側に立てられた几帳の向こうに、顔と衣裳の端が覗いているだけですが、褪色した原画でも甘草色の袴ははっきりと見て取れます。
袿の色は原画だと判然としませんが、復元模写では尼君に相応しく濃い青鈍色になっています。
確かにここには、尼君が座っているのです。

ですが、この場面の原文をいくら読んでも、尼君がこの場にいたとは出てきません。
そもそも玉鬘邸に出家の身で仕えている(例えば宇治十帖の弁の尼のような)女房がいるというような記述もありません。
また、原文では姫君達の傍らに控えて碁の判者を務めたのは弟の侍従の君と記されています。
全く原文からは読み取れない人物が、どうして画面の片隅とはいえ、この場面の主役である姫君達のすぐ傍らに描かれたのでしょうか。
原文にない人物をわざわざ描いたのは、何かしら画家に明確な意図があってのことと推測されるのですが、その意図が一体何なのかは、筆者には皆目見当も付きません。
竹河巻の中には、大君を冷泉院に、中の君を尚侍として宮中に出仕させた後、玉鬘が出家しようと思い立つものの息子達に諌められて断念する場面がありますけれど、あるいはそれと関係があるのかないのか。
わからないまま、あれこれ想像を巡らすばかりです。

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