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2006年5月19日 (金)

壁代

031kabeshiro読んで字の如く、“壁の代わり”に母屋と廂の間の上長押から下長押に掛け下げる帳。
遮蔽・防寒などの実用性の他、装飾的な役割も担う調度でした。
(写真は、2006年風俗博物館展示「女三の宮六条院降嫁」より、国宝『源氏物語絵巻』柏木(二)に描かれたものを再現した壁代)

壁代の形状や材質については、『類聚雑要抄』巻四「母屋調度事」や『満佐須計装束抄』一巻「母屋庇調度事」に具体的な記述があります。
それらをまとめると、大きさは高さ九尺八寸(約294cm)・幅七幅(約222cm)、材質は夏と冬で異なります。
夏用は、生絹の平織の表地に白泥で秋草などを描き、光沢を出した白の練平絹の裏地をつけたもの。
冬用は、白の練平絹に纐纈染(布を糸で括って模様を染める絞り染めの一種)を施した表地に、夏と同じ光沢を出した白の練平絹の裏地をつけたもの。
どちらの書物でも“帳台・几帳の帷に同じ”という書き方がされているのが目を引きます。
こうした帷の類は、トータル・コーディネイトが意識されていたのでしょうか。
布地の表裏には、幅毎に「野筋」と呼ばれる幅三寸ほどの紐を2本ずつ垂らします。
紐の色は、表は蘇芳と濃紫を半々、裏は白と定められています。
また、裾は袋縫いにして小端の板を入れます。

かけるときは、表が御簾に接するようにし、床に余った裾は御簾の外に出しました。
御簾と同じように巻き上げることもあり、その際は小端を芯にして巻き、野筋で結び留めました。
国宝『源氏物語絵巻』柏木(二)と横笛には、床まで下ろした状態と巻き上げた状態の両方の壁代が描かれていて、生活の中での使い方がわかります。
中でも、柏木(二)に描かれた華やかな壁代は、最上流の貴族の華麗な暮らし振りを感じさせます。

『源氏物語』の中で壁代が登場するのは3例。
1例目は若菜上巻で、玉鬘が光源氏四十の賀のために新調した室礼の1つとして「屏風、壁代よりはじめ」と挙がっています。
2例目は夕霧巻で、落葉の宮を小野の山荘から一条宮へ移そうとする夕霧が、寂れた宮を改装する中で「壁代、御屏風、御几帳、御座などまで思し寄りつつ」と記されます。
3例目は総角巻。
宇治の八の宮邸の衣更えを気遣った薫が、「御帳の帷、壁代など」を贈る記述があります。
このような記述から、用例は少ないですが、壁代が季節に応じて室内を整える基本的な調度だったことを見て取ることができます。
写真からもおわかりいただけるように、色や柄によって室内の雰囲気をがらりと変えるところが、いかにも平安の貴族文化らしいと言えるでしょうか。

【参考文献】
『類聚雑要抄』(3訂版『群書類従』第26輯所収)続群書類従完成会 1960年
源雅亮著『満佐須計装束抄』(3訂版『群書類従』第8輯所収)続群書類従完成会 1960年
山中裕, 鈴木一雄編『平安時代の信仰と生活』(平安時代の文学と生活)至文堂 1994年
秋山虔, 小町谷照彦編『源氏物語図典』小学館 1997年
古代学協会, 古代学研究所編『平安時代史事典』角川書店 1994年
NHK名古屋放送局・NHK中部ブレーンズ編集『よみがえる源氏物語絵巻』NHK名古屋放送局・NHK中部ブレーンズ 2005年

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