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2006年8月 5日 (土)

迦陵頻

047karyobin_1 048karyobin_2左方唐楽壱越調の舞曲で、四人の童舞。
林邑(現在のベトナム一帯)僧仏哲が伝えた“林邑八楽”の1つで、祇園精舎の供養の日に迦陵頻伽(美しい鳴き声をもち極楽に住むとされる想像上の鳥)がやってきて舞った様子を写した舞楽であると伝えられています。
番舞は「胡蝶」で、主に仏教法会の供養舞として使われます。

平安時代の仮名作品では「迦陵頻」よりも「鳥の舞」「鳥」と記される場合が多いようです。
『枕草子』第二〇五段「舞は」には「鳥の舞」と挙げられ、『栄花物語』でも「鳥の舞」と記され、法成寺薬師堂遷仏供養を描いた巻第二十二の巻名にもなっています。
『源氏物語』では、秋好中宮の季御読経に際して、紫の上の使者として「」と「」の装束を纏った童8人が花を奉り、舞を披露する描写があります。

鴬のうららかなる音に、「鳥の楽」はなやかに聞きわたされて、池の水鳥もそこはかとなくさへづりわたるに、「急」になり果つるほど、飽かずおもしろし。(胡蝶巻)

049karyobin_3 舞人の装束は別様装束で、天冠・袍・指貫・大口・腰帯・鳥足・糸鞋・羽根・銅拍子で構成されます。
天冠は童舞で着用する山形の頭飾りで、迦陵頻の場合は金の天冠の左右に挿頭の桜の花を挿し、赤い総角を下げます。
袍の形は童舞共通で成人の闕腋袍と同形、迦陵頻では曲に相応しく鳥の刺繍が施されます。
鳥足は、脚絆に似た脛当てで、白と縹の縞模様が特徴です。
羽根は、左右の羽根と尾羽、背、胸の各部からなり、皮紐でつないで背負います。
銅拍子は掌サイズのシンバルのような楽器で、両手に持って舞いながら打ち鳴らしますが、この音は迦陵頻伽の鳴き声を表していると言われます。
(写真は、2004年上半期風俗博物館展示「季の御読経」より、桜の花を奉る「鳥」の童)

049_2karyobin_4 楽曲形態は、まず林邑乱声を奏して舞人が登台、銅拍子を鳴らしながら〈出手〉を舞い、所定の位置につきます。
次いで迦陵頻音取が演奏され、現行の舞楽ではすぐ〈急〉に入りますが、〈破〉の曲も伝わっており、古くは〈急〉の前に〈破〉の舞があったと見られます。
(胡蝶巻引用文でも「「急」になり果つるほど」と、〈急〉の前に何か舞があったと読める記述がされています)
〈急〉を繰り返し演奏するうちに舞人は舞台を一周してから順次降台し、楽屋に入ると奏楽が止んで終わります。
鳥が飛び跳ねるような所作があり、童舞ならではのとても可愛らしい舞です。
(最後の写真は、いちひめ雅楽会の迦陵頻。2003年5月31日撮影)

【参考文献】
安倍季尚撰 ; 正宗敦夫編纂校訂『楽家録』(覆刻日本古典全集)現代思潮社 1977年
音楽之友社[編]『邦楽百科辞典 : 雅楽から民謡まで』音楽之友社 1984年
東儀信太郎[ほか]執筆『雅楽事典』音楽之友社 1989年
高島千春筆『舞楽図 左』(故實叢書第3輯第18回)吉川弘文館 1905年

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