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2007年1月 2日 (火)

『平安朝の年中行事』

076nenchu 『源氏物語』の中に織り込まれる四季折々の年中行事は、季節感と登場人物の立場や心情の両方を描き出す役割を果たしており、行事の内容を理解することで、物語が描こうとした意味に気づける側面もあります。
そうした歴史方面の理解を助けてくれる資料として、先にご紹介した『平安時代の儀礼と歳事』がありますが、年中行事に的を絞ってより詳しく解説しているのが本書です。

『平安朝の年中行事』
山中裕[著] (塙選書75) 塙書房 1972年刊行
ISBN:4-8273-3075-1 税込2,520円

既に刊行から30年以上も経った本ではありますが、史学・文学の両面から平安時代の年中行事を詳述した研究書として今でも増刷を続けているロングセラーです。

目次は以下のようになっています。

  • 序論
  • 第一章 年中行事の成立と変遷
    • 一 年中行事の意義
    • 二 年中行事の成立―宴から節会へ―
    • 三 年中行事の変遷
  • 第二章 平安朝の年中行事の特質と意義―正月四方拝より十二月追儺まで―
    • 一 春の行事
    • 二 夏の行事
    • 三 秋の行事
    • 四 冬の行事
  • 第三章 平安文学と年中行事
    • 一 その環境
    • 二 女流文学と年中行事

第一・二章は、歴史書や儀式書の記録を丹念に引きながら、歴史上の年中行事の実像を描き出します。
『源氏物語』に活写されている男踏歌や端午の節句、五節などの他、臨時客や内宴、月の宴のように文中に名前だけ出てくるもの、更には名前も出ないものまで、50近い行事が取り上げられています。
中国の文献も含めて漢文史料が白文のまま引用されているので、素人にはちょっと厳しいところもありますが、併せて『枕草子』や『紫式部日記』『栄花物語』といった仮名作品の記述が取り上げられており、両方を読み合わせると「なるほど」と思う点が少なくありません。
また第三章では、表題のとおり女流文学を中心とした平安文学に描かれた年中行事について考察しており、描写の史料的な価値と、美的な描かれ方の特質を指摘しています。
著者が歴史学者であるゆえか、文学作品の捉え方としては「?」と感じる箇所もないではありませんが、歴史の側から作品を見直す新鮮さを楽しめます。

『平安時代の儀礼と歳事』よりも更に史学方面の専門的な本ですので、最初は少々難しく感じるかもしれませんけれど、『源氏物語』の四季を雅やかに彩る年中行事をより深く味わいたい方にはお薦めです。
巻末には詳細な索引が付いていて、調べ物をする上でもとても役に立ちますので、学生さんのレポートの資料としても向いていると思います。

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