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2007年5月 3日 (木)

『源氏物語の鑑賞と基礎知識』

120kanshokiso 『源氏物語』の副読本は数え切れないほど沢山ありますが、その中で今回は、原文をじっくりと読みたい方にお薦めのシリーズをご紹介いたします。

『源氏物語の鑑賞と基礎知識』全43冊
鈴木一雄監修(国文学解釈と鑑賞別冊) 至文堂 1998-2005年
ISBN:増補改装版を除きなし 税込各2,520円(増補改装版は税込2,835円)

写真はNo.1「桐壺」の増補改装版です。

基本的にひとつの巻を1冊で取り上げますが、長編の若菜上下巻と宿木巻はそれぞれ2分冊で、玉鬘十帖などの比較的短い巻は二・三巻まとめた形になっているため、全43冊というちょっと中途半端な数字になっています。
各冊の目次は、以下のとおりです。

  • 序文
  • 人物紹介
  • 源氏ゆかりの地を訪ねて
  • 影印本を読む
  • 原文
  • 論文

“鑑賞と基礎知識”というシリーズタイトルのとおり、原文が本の中心です。
見開きページの右ページ上に原文、右ページ下に現代語訳、左ページ上に鑑賞と用語解説、左ページ下に語句解釈、という構成になっていて、ときどき補助論文として2ページ前後のより詳しい解説が挟まれています。
No.1「桐壺」を例に取ると、

  • 最初の見開き2ページ
    冒頭の原文と、それに対応した「めざまし」「あいなく」の用語解説
  • 次の見開き2ページ
    「いづれの御時にか―物語の時代設定①」
    「平安時代のことば―格助詞「が」から接続助詞「が」へ」
    「物語とは」
    の3つの補助論文
  • 次の見開き2ページ
    3ページ前を受けて原文の続き

…という形で展開しています。

この補助論文がこのシリーズの大きな特徴で、特定の描写・人物・語彙などをより掘り下げた読解や歴史的背景の解説、漢字の訓み方、会話文と地の文との切り分けや発話者の解釈の問題、更には源氏絵や工芸意匠の鑑賞など、幅広いテーマで1冊につき20本以上が収められています。
コンパクトな量で基本的な内容がきっちりとまとめられているので、私はこのBlogの記事を書く際にもよく参考にしています(各記事末尾の【参考文献】で挙げているとおりです)。

もうひとつ特徴的なのが「源氏ゆかりの地を訪ねて」。
その名のとおり、その巻の舞台となる土地や関連する場所を紹介するという、ありがちと言えばありがちな企画ですが、テーマ設定がなかなかユニークなのです。
「桐壺」で平安宮大内裏、「玉鬘」で九州、「橋姫」で宇治、…などというのは誰でも考えそうなものですけれど、「常夏・篝火・野分」では近江の君の早口の元凶?の大徳が属した妙法寺、「梅枝・藤裏葉」では源氏に唐物を献じる大宰大弐に絡めて大宰府・鴻臚舘、「柏木」では柏木の加持祈祷のために致仕大臣が招いた行者の修行地・和泉葛城山、といった具合に、「そう来たか!」と思わず膝を打ちたくなるような切り口で、予想外の場所もあちこち取り上げられています。
カラー写真が豊富に織り込まれているので見ているだけで楽しいですし、地図や住所などのデータも付いているので、実際にその場所を訪ねてみるのも一興です。
ちょっとした平安時代の史跡巡りが楽しめます。

「論文」の項では、その巻に関する代表的な論文や読解の手助けとなる書き下ろし論文などを各冊5・6本掲載しています。
“論文”というといかにも難しそうで、実際のところ難解なものも確かに含まれてはいるのですが、一般人があまり触れる機会のない『源氏物語』研究の一端を知ることができると同時に、さまざまな観点から『源氏物語』を扱った論文が収録されているので、ごく普通に原文なり現代語訳なりを読むのとは違った着眼点での読み方を発見できる面白さもあります。

正直に言って、合計の冊数と金額を考えると手を出すのが些か躊躇われるシリーズではありますが、文庫本や文学全集などに付いている注釈よりもう1歩踏み込んで原文を読んでみたいとお考えの方には、ちょうど程よい内容と構成になっていると思います。
現時点では、No.3「若菜上(前半)」以外は出版社に在庫があるそうで、至文堂Webサイトまたは書店を通して購入が可能です。

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